大学2回生のときの広告制作の実習の講師に授業内容もそこそこに雑談ばかりする先生がいた。
もちろん、ボクは彼を気に入っているというか、尊敬していた。
彼はばりばりの広告屋で、多くの大きなプロジェクトを動かしてきた事を自負し、自信にあふれる人だった。
彼の話はいままでの表面的な知識を教えるだけの教師と違って、その表面的な事象がどうしてそうなっているのかという世の中の表面より少し深いところにある、陳腐な言い方をすれば「裏」っぽい部分をさまざまな知識と経験の裏付けとともに持っている話だった。

ある時、「広告って何だと思う?」と訊ねられた。ボクは「企業や商品、サービスなどを消費者に知らせる手法」と答えた。
彼はそれも正解だけど、こういう考え方をすればもっと広告が好きになるよ、と言って話し始めた。
ジュースを飲んでいて、相手の人の飲んでいるジュースちょっと飲みたいとき。
そのときに「そのジュース、ちょっとちょうだい」と自分の意志=情報を伝えるのがただの情報伝達。
「ぼくのジュース飲む?」と言って「じゃぁ、このジュースも飲む?」と相手に言わせるのが広告、
というわけ。
相手にこちらの露骨な意志を悟られずに、気持ちよく相手をこちらの望んだ通りに誘い、動かす。
それが広告の醍醐味であり、面白さだ。

その話を聞いて、僕はそのような世の中の少し深いところにあるなんだか「正解っぽい」ものを見つけて、そこを刺激して世の中全体を動かしていく広告というものをさらに興味を持った。
これがボクが広告制作屋を目指すルーツのはなし。
彼との出会いはボクの人生の中で最も大切な出会いであったし、彼から学んだ広告に対しての情熱や自分のアイデアを形にするために努力してきた大学での制作活動などの経験は今のボクを構成するもっとも大切なものだと思う。


大切なモノって物体とは限らないよ。

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